うっすら滲む汗が不快感とイライラをつのらせていく。
13の夏、
溶け出す憂鬱
フローリングの床にだらしなくうつ伏せに寝そべって太陽から顔を背ける。天気予報のお姉さんが今年一番の猛暑っていった時に限ってクーラーが壊れるなんて世の中どうかしてる。いくらキャミソールに短パンでも、いくら代わりに出された扇風機から風が送られてきても、ちっとも涼しくなんかない。しかもその風はそよそよと生温い。この際窓を開けた方がいくらかマシかも。
「・・・あ・・つー」
人間の体って上手い具合に出来ているらしくて、暑さと気だるさで動く気力もなくなると、こんな暑い中でも瞼が重くなってくる。それを煽るように時たま開け放った窓から冷たくて気持いい風が体の隅々まで撫でていく。うっすらと部屋の時計を見ると2時半過ぎ。そろそろ涼しくなってくる時間帯、そう思うことでまた眠さに拍車がかかる。
――。
「こんちはーおじゃましまーす」
コンビニの袋を片手にお隣さんの家にズカズカと上がりながら、お邪魔しますだなんて意味がないか。そう思いつつリビングを覗き込むと人気がない。玄関の鍵は開いてたんだから居ないのは無用心すぎるだろう、多分今この家の人間の殆どはいない、だけど彼女はいるんだろう。確証も何もない所で変に確信。
「いた」
ほらな、オレって結構勘が良い。心の中で呟いて、ある部屋の窓際近くの日陰で寝そべるを見て気分が上がった。けれどそれは直ぐに急降下していく。何でって目的の人物はいるにはいるけど寝てるし、これじゃあ遊びに来た意味がない。・・・。それにしても今日は暑い。
「 ・・・。?」
「・・・」
呼びかけても反応無し。一度寝たら当分起きないのなんて十分承知のうえ。早々に諦めて持って来たコンビニの袋から棒アイスを取り出して残り(の分)を部屋の小さな冷凍庫に突っ込んだ。暇だからベッドに寄り掛かって座り、最近の愛読してるらしい漫画本に手を伸ばす。(なんで愛読してるのが判るかって、ベッドの枕の横に積まれてるから)
首を振って生温い風を送り続ける扇風機のヴーンという特有の機械音と、外界のちょっとした音。
「・・・はー」
読み始めて早々に漫画をベッドに放った。部屋の空中を見ながら棒アイスを舐めつつ、ぼんやり考える。下らない事を。最近の少女漫画って無駄にエロイ上に典型的な少女漫画のお決まりのストーリーだ、とか、今日の夕飯素麺食いたい、とか、早く起きないかな、とか。
――。
「オレって結構時間潰せちゃうんだ」
一人でちょっと悲しく呟いて時計を見直せば4時近く。とうに食べ終わった棒アイスの棒を無駄に咥えていたのを思い出してゴミ箱に捨てた。チラりとを見ても、一向に起きそうにない。そろそろオレも本気で飽きてきたし起こそうかな。
「いい加減起きろよ。いつまで昼寝してるんさ?」
「・・ん゙ー」
例に倣ってが簡単に起きない事も十分承知のうえ・・・だけど、よくよく考えてみればオレって何してるんさ?遊びに来たのに、遊びたいが寝てるから起こさないで一人で考え事とかして、この一時間以上の時間が無駄になった。・・・遊びに来たのに!
「オレはと遊ぶために来たのにお前なんで寝てるんさ!」
「んん゙ー?」
一瞬逆ギレして大声出をしたら、が機嫌悪そうな声と顔して、ごろんと寝返りを打って目を擦りだした。なんか起きた後の雲行きが怪しいけど、結果はオーライ?起きてくれたらとりあえずアイスをあげて機嫌を直そう、なんて暢気な事を考えた。
「だれ? ・・・ラビ?」
「お前昼寝長い!」
「・・・まだ眠い」
「オレが遊びに来たのに寝るんさ?って薄情」
「また明日遊ぼうよ」
冷凍庫からアイスを取り出そうとして、言われた言葉にもう一度の方を向いた。オレって邪魔者扱い?っつーかが寝起き悪いの知ってるけど、いくらなんでも薄情っていうか酷過ぎ。(気分的に)ガーンなんていうベタな文字を背負ってを睨めば、眠そうな目で見返される。
「のヴァカー!」
「うるさいなァ。大体何して遊ぶの?」
「!。そりゃ・・ゲームとか話とか」
「・・・また明日」
一瞬喜んだオレが馬鹿だった。何して遊ぶかなんて聞かれたら遊んでくれんのかと思うじゃん、普通。なのにはもそもそとベッドに移動して寝なおしやがった。せっかくに買ってきたアイスだけどオレが食ってやろうか。
「・・・今日おばさんは自治会だろ?おじさんは?」
「しゅっちょー」
寝させてたまるかと話しかけたけどイザ出てきた言葉はこれ。なんかもっとこう、が起きるような話題ないかな。そう思いつつ冷凍庫に手を伸ばしての分の棒アイスを出した。ガサガサという袋の音にが頭をこちらに向ける。
「何それ」
「お前に買ってきたアイスだけどお前起きそうにないからオレが食べようかと」
自分の家(というか部屋)の冷凍庫から見知らぬアイスが出てきたらそりゃ驚くか。丁度が興味を示したからこのままアイスで釣ってやろうという考えが頭をもたげる。
「食べたい」
「起きなきゃあげないさ」
オレの考えに釣られるかのようにがむくりと起き上がった。もう一押しかな、とか思いつつ手に持ったアイスを左右に軽く振ってみると、渋々ベッドから降りてオレの隣に座って手を差し出した。・・・オレって操るの上手いかも。
「起きたよ、ちょうだい」
「アイス食ったらオレと遊ぶ?」
「・・・ええ・・・。ってアアア!!!」
一瞬嫌そうな顔をしたに、気づいたらオレは自分の口にアイスを突っ込んで笑っていた。アイスあげても遊んでくれないんじゃ意味が無い。けど目に見えて不機嫌になっていくに今更だけど少し後悔する。
「おへわふふなひほん(オレ悪くないもん)」
「・・・」
一応知らん顔をして、さっきオレが食ったのと一緒の味の棒アイスをかじった。だけど内心に怒られるんじゃないかと思ってビクついてる自分が情けない。は明らかに不機嫌マックスで黙ってオレを睨んできてるし、さあどうしよう?
「・・・。」
「ラビ」
「ん? ンん!?」
内心ビクつきつつアイスを咥えなおすと、暫くジッとオレを見ていたが声をかけてきたのと同時に、オレの手に近い方(下の方)のアイスにかじりついてきた。顔が近くて、何より驚いて身を引くとバランスを崩してそのまま後ろに倒れこんだ。そして後頭部を床に強打したことより、が覆いかぶさって来たことに気を取られてしまう。
「ふぁっ!?」
「コレ私のアイスなんでしょ?いいじゃん」
は倒れたオレの顔の両側に手を付くと、そのまま顔を下げてきてオレの口に入れっ放しのアイスを舐め始めた。色々逆な気がするっつーか物凄く恥ずかしいけどこのままキスできるかもしれないとか、そんな淡い期待が交じったままオレは動く事ができなかった。
「・・・っ」
「・・・」
ずっとアイスを咥えてるといい加減唇やら口内が冷たすぎて痛くなってくる。それが顔に出たのか、は徐に棒の部分を持ってオレの口からアイスを引き抜いて自分の口に入れて、更にオレの口の端についたアイスが溶けたものと唾液が混じったモノを指で拭って笑った。そして普通に起き上がってアイスを食べ始める。
「・・・」
「どうしたの?ラビ」
「っ おま・・えっ、」
色んな意味で居た堪れなくなったオレは勢いよく起き上がってに聞いてみる、けど、はまた楽しそうな(っつーか優越感に浸ったような)顔をして笑って見せるだけで、何も答えなかった。正直してやられた感が紙面に書いて眼前に突きつけられたかのようにあるんだけど、正直今のじゃ物足りないと思う自分もいるから何も言い返せない。
「・・・」
「なに?」
だんだん頭が働かなくなってきて、ぼうっとがアイスを食べる様(主に口元)を見てると、が変なものでも見るような目で見返してきた。オレはそれに頭を掻きながらそっぽを向いてなんでもないと言いつつ、内心微妙な気分だった。そして一瞬さっき読んだ無駄にエロイ少女漫画の内容を思い出して更に妙な気分になる。
「涼しくなってきたねぇ」
「・・・あー、うん。そうさね」
「何して遊ぶ?」
「・・・あー」
自分で散々遊びたいと言っていたのを今思い出して、けれど遊ぶ気分にはなれなくて適当な返事をしたらが頭を小突いた。その小さな衝撃にまかせてバッタリと床にまた倒れこむ。主にこの微妙な気分の原因は、さっきの指で拭われた口の端の感触とか、顔が近かった時にほんの少し額に当たったの髪の先だとか、なんだろう、オレって欲求不満なんかな。
「変なラビ」
「うるさいさ」
またの声が投げかけられて、このまま寝入りたくなるような、ドロドロした溶け出したい様な変な気分になった。せっかくちょっと夕方で涼しくなってきて、しかもが遊ぼうと呼びかけてきたのに、オレは何故かちっとも嬉しくない。
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★13才っていう微妙なお年頃(性的な事に色々興味持ち始めちゃったり好きな子の事を異常に意識しちゃう時期)の幼馴染(現代パロ)でしたが如何でしたでしょう?半笑