「お母さん町内会行ってくるからご飯食べたら後片付けしといてね」
「「はーい」」
「・・・お兄ちゃん」
「んー?」
「トマト食べる?」
「・・・お前、トマト嫌いだからってオレに食わせようとすんなよ」
「えー、だって・・・残すと片付けするとき大変なんだもん」
母親が出てから直ぐ、は自分の分の盛り分けられたサラダにあるミニトマトを見ながらオレにそう言ってきた。それじゃあまるでオレがの三角コーナーみたいさ。生憎だけど断りをいれると箸先を口に咥えてどうしようかと悩み出した。悩むくらいなら食わなきゃいいのに一々可愛いことしてくれる。
「・・・早く食えさ」
「・・・お兄ちゃん」
「そんな目で見てもダーメ」
オレが食い終わっても尚トマトと格闘している(というより食おうとしないでいる)にオレの方がそのトマトの事が気になって仕方が無い。アワヨクバ、オレに食べさせようとしている下心が丸見えなのにこっちを見てくるの目に負けそうなオレは何処か可笑しいんだろうか。自分に言い聞かせるのも含め、比較的優しめの声でそういうとは項垂れて見せた。
「お兄ちゃんと結婚する人は、嫌いなモノ食べないといけないから可哀想」
「じゃあその話でいくとが可哀想なんさね」
「・・・えっ、」
「・・・」
「・・・」
何で黙ったんさ?照れたにしては泣きそうな顔をしてるし、結構軽く言ったつもりの言葉なのに、は酷く困ったような顔をして、更にその顔を真っ赤にして持っていた箸を落としてしまった。そんなに今のはまずいコトだったんだろうか。オレとしてもかなりショック。
「トマト食ってやるからコッチ貸して」
「・・・うん」
何でこんな微妙な雰囲気になったのか本当に疑問を感じずにはいられない。二人して無言で食器を片付けるのも結構キツイし、なによりはオレと結婚したくないんだろうか。っつーかはオレのことをちゃんと好きなんだろうか。のことだから、もしかしたら無理して付き合ってるのかもしれない。・・・あー、馬鹿馬鹿しいやめやめ。変な不安がぐるぐると渦巻いてため息が出そうになった。
「風呂どっち先入るさ?」
「お兄ちゃん先でいいよ・・・私課題あるから、」
「そ」
「うん」
「・・・やっぱ一緒に入らん?」
「?! はっ入らないってば!いいから早く入っりなよ!」
あ、ちょっと今のでいつものに戻ったかな。とりあえず風呂に一緒に入るのは拒否されたので大人しく一人で入る事にしましょうか。そんな事を考えて風呂場に向かった。
けどオレってあんまり長風呂しないから10分程度で出てきちゃうんさ。だから出てきて、課題をやるって言ってたは自分の部屋に戻ったかな、なんて思いながらリビングに入るとリビングで床に置いてあるテーブルでシャーペンを走らせるが目に入った。部屋で勉強をしてる時は声もかけづらいし正直嬉しい。
「」
「ん?」
「オレ出たから入れば?」
「終わったら入る」
「さいで」
「うん」
冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターのペットボトルを片手にそう呼びかけると、集中してるのか気の無い様な返事が返ってきた。まー早く終わったほうが良いし邪魔する気はないんだけど、・・・ないんだけど、家に二人っきりかと思うと邪魔せずにはいられない。早々にペットボトルを台所に置き去りにして、脚を崩してテーブルに向かっているの後ろに座って腹の方に腕を回して後ろから軽く抱きついてみた。
「なに ?」
「気にしないでいいさ」
「気になる」
「・・・じゃあそのままもっと気にして」
「え ッ、やめ、」
の肩に顎をのせると少し肩を竦めての手が止まった。それを良い事に耳裏辺りに鼻と唇を寄せると軽く身じろぎして抵抗する。別にシようなんて思ってないけど、最低限、これくらいのスキンシップくらい慣れてくれたら嬉しい。でも慣れてない所がまた可愛いんだけど、あれだ、女の子から見れば意味不明な男のロマンてやつかもしんない。
「こーゆーのされんの嫌い?」
「っ、んん」
「そんな声出すと勘違いするさ」
くすぐったいのかそれとも他の理由なのか、オレがの唇がの首を掠めると若干前に倒れてそう応えた。オレには応えた、よりも啼いた、って言った方がしっくりくるんだけどまさかシてるわけでもないし。いつの間にかシャーペンを放ってオレの手に手を重ねているがこの上なく愛しい。
「痛っ」
「が可愛いのが悪い」
「なに言・・って、ココじゃ見えちゃう」
「男避けさ」
項の目立つ所に痕を付けたのが気になるのか手で自分の首を触るに笑ってそう言うと、必要ないのにと返された。まあ確かに学校行ってもオレとばっか一緒にいるから必要ないといえば無いけど、あればあったで良い。つーかオレが付けたいから付けたってことで十分。
「・・・。あの、」
「ん?」
「あのさ、課題後でちゃんとやるから、そっち向いても良い、?」
「何で一々そんな事聞くんさ」
まさかオレが怒るとでも思ってたんか?わざわざ聞いてくるが可笑しくて可愛くて、オレからの腰を掴んで体を反転させてぎゅうっと抱きしめた。オレは課題よりオレを優先して欲しくて堪んないのが本音なんだからそんな事言わなくて良いんさ、そう言ったらはどんな顔をするだろうか。
「お兄ちゃん、」
「なに?」
「私お兄ちゃんと兄妹で良かった」
「・・・オレもと兄妹で良かったさ」
オレの背中に腕をまわしてくるに、風呂に入る前に悩んでいたことがどうでもよくなった。は変に猫を被ったりしないからきっと今顔が赤いだろう。普段言いそうに無いこんな事を頑張って言ってくれたが愛しくてそのまま唇を合わせた。
「・・っお兄ちゃん」
舌を入れそうになるとが顔を背けたから、少々物足りなさを感じつつも顔を逸らした事で露になった首筋にまた鼻と唇を寄せた。今更だけどやっぱりオレも名前で呼んでもらいたいという想いが出てきて、抱きしめる腕に力を込めて今まで何度も言ってきた言葉をまた言う。
「は何時んなったらオレのこと名前で呼んでくれるんさ?」
「え、あ・・・らび、」
「うん、なに?」
「・・・」
オレの顔をみてオレの我侭にちゃんと応えてくれて、今度はオレがそう問いかけると顔を赤くして目線を下に下げたが可愛くて、また強く抱きしめた。本気でなんでこんな可愛い生き物が生まれるんだか、その件は両親に感謝せずにはいられない。たとえその両親を裏切る行為をしているとしても。
「らび、」
「うん」
「・・っきすしたい、」
「 飽きるまでしてやるさ」
愛らしくて大好きで愛しいに言われた通り唇での下唇を挟んだり角度を変えて重ねたりそれを暫く繰り返した。いくら唇を合わせ続けても治まるどころか益々膨張して大きくなっていく気持ちはどうしたら消すことができるんだろうか。本当は消したくなんてないんだけれど、どうもオレには持て余してしまって扱いきれない。だからに半分渡してしまおうか。そしたらはオレの事をもっと名前で呼んで今以上にオレの事を好きになって愛してくれるだろうか。
途切れ始める平生
そしたらもう本気でカケオチでもしないとやっていけないかもしれないけど
それもまたとなら愛しくて楽しい未来になる。
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