「アリス」

「え・・誰? あ、わあ可愛い耳!」









キョロキョロと辺りを見回しながら道なき道を進む女の子をみつけた。オレは直感する。あれはアリスだ。後ろから近づいて手首を掴むと驚いた様な顔をして返された。そしてその後好奇心もろ出しに俺の頭の上に長く伸びた耳を触ってきた。ああばか、耳って気持ちいんだよ。しかもアリスの顔が近くてめっちゃちゅーしたくなる。初対面?そんなのこの国じゃ関係ない。しかもオレは時計ウサギで彼女はアリスだ。接点があって当然さ。









「!? うさぎさっ・・あむっ、ぅ・・うう・・」









うさぎで合ってるっちゃー合ってるんだけど、ラビって名前があるからできればそっちで呼んでほしい。オレが顔を寄せたのに驚き喋りかけのその唇に噛み付いて唇を舌でなぞる様にして何度も舐めるとアリスの顔が紅潮した。もうマジで可愛いさぁ。アリスはこれから猫に誑かされる予定だけど、そんなことさせたくない。オレが誑かしてそのままお持ち帰りしてそんでお付合いしたりあわよくばずっと一緒に暮らしたい。









「や・・ぁ、う?!」









オレの肩を押して尚且つ顔を背けようとするアリスのその唇を追うと、丁度口が開いたので口内に舌を挿入させた。驚いて一瞬だけ固まった体に腕を回して抱き寄せて、口内でアリスの舌を探す。くっつけている唇が柔らかくて口内は甘ったるくて熱くてこのまま歯をたてて食べたくなってしまう。絡めようとしても逃げる舌に歯痒さを感じて角度を少し変えて深く口付けた。









「んう・・っ ふ、・・んっ、んン」









漸く舌を捕まえて絡めたりその舌を奥から手前へ舐め上げるとアリスの肩が震えた。しかも脚に力が入らなくなってきたらしくオレの服にしがみ付いてきて尚の事可愛い。可愛くて仕方が無い。もうダメだ、絶対オレのものにしたい。オレだけのものにしたい。衝動が止まらなくて半ば倒れこむ様にしてその下の草むらに押倒した。









押倒しても尚唇を合わせるオレに翻弄され始めているのか相変わらず顔を赤くしたまま素直にキスを受けるアリスに更に慾が湧く。今すぐ全て食べつくしたい。全身くまなく味わいたい。こんなにも収まりの利かない衝動は初めてでどうにもオレ自身でブレーキをかけられそうにない。けれどやっぱりアリスには嫌われたくない。絡めていた舌を名残惜しく感じながら離した後に軽く唇に何度か口付けてアリスを解放した。









「あ、っはあ・・はぁ、」

「いきなりごめんさ、・・・びっくりした?」









わざわざ聞くまでも無いか。息を乱しながらオレを見てくるその眼淵に指を這わせながら聞くとゆっくり頷かれて正直罪悪感が少し残る。けれどその直後に再び耳を触られてもう一度唇を合わせたい衝動に駆られる。誘ってるのか誘ってないのか。









「・・、オレのこと嫌いになったさ?」









耳から頬に降りてきたアリスの手を握りながら恐る恐る聞くと首を横に振られて思い切り安堵する。ああもうマジ良かったさ。いきなりちゅーとかしたり押倒したりしちゃったけど嫌われないで良かった。実際オレは今落ち着いた様な顔をしているかもしれないけれど内心心臓はバクバクだし頭は色んな意味(主にアリスが原因)でパンク寸前だ。









「あ、あの、」

「ん?」

「何か今更でごめんなさいなんですが、私アリスなんて名前じゃない・・です・・よ」

「? 知ってるさ、そんなん」

「・・・え・・えっ・・?」









アリスは役柄の名前に過ぎないなんてことは百も承知。でもこの子がアリスの役であることは間違いない。百面相をして疑問符を浮かべるアリスに思わず口元が綻んでしまう。あーもうマジで可愛いなぁ。誰だよこんなオレの好みど真ん中の子をアリスにした奴。むしろ運命のせいとからしくないコト言ってもいいだろうか。









「じゃあアリスじゃなくて本当の名前、教えて?オレだけに」

「あ、はい・・えっと、、です・・・」









ゆっくりと今初めて知ったその名前を復唱した。、初めて知ったにしては馴染みが有り過ぎて、本当にアリスの実名を知らなかったのか疑問だ。やっぱりこれって運命とかそのへんなんじゃないんかな。そんな事を考えていると首から下げて胸のポケットに入れておいた懐中時計が落ちてぶら下ってオレに今の時間を知らしめた。









「あ、やべえ、完璧に遅刻さ」

「へ?」









女王陛下の所に招集がかかっていたのだが、その女王陛下の所に行くには約1時間弱かかる。けれども今はその召集時間の10分前。完璧にアウト。ここまでくると逆に開き直りが出てきて、未だにオレに組み敷かれたままオレの下にいるアリスを家に連れて帰ろうか、なんてことを思ってしまう。









「アリスは本当はこれから猫に会って云々なんだろうけど、予定変更」

「?」

、オレの家に来てよ」









ニッコリと笑んでそう言うと、アリスは訳も判らないまま徐に頷いて見せた。もう"アリス"はこの世界から居なくなって、誰に彼に会うストーリーも無くなる。そしてアリスを演じる筈だった女の子だけオレの手元に。きっとアリスのことだから帰り道も知らないはず。オレはアリスが帰る道を知ってるけど、もうお前はアリスじゃないし、オレのものになるから教えてなんてやらない。これでもう永遠にアリスの話が進むことも、アリスが誰かに誑かされることはないさ。
































こっそりオマケ。翌日のお話。

「時計ウサギ、アリス見かけませんでした?」

「しらんさー。どうしたんさ女(?)王陛下。」

「アリスが国に迷い込んだのは確かなんですがその後行方不明なんです。」

「へぇーそりゃ一大事さねぇ」

「・・・。やる気あるんですか!?」

「あるさ、めっちゃあるって。カリカリすると良いことないさ女王殿下。」

「あーもう、チェシャ猫も役に立たないし時計ウサギも(ブツブツ)」

「チェシャ猫宛にする時点で間違ってる気がするんだけど」
































最終的にストーリーをぶちこわしアリスを独占する時計ウサギが書きたかった。アリスが一番最初に会うのも時計ウサギなんだから時計ウサギはやろうと思えばこんなこともできるんではないか、なぁ〜んて思って書いた愛情ストーリー(←?)。そして結局行方不明扱いになってしまったアリスとその原因^^ちなみに女王陛下はアレン君だと良いなと思います。チェシャ猫は怒りん坊で短気で(直ぐ消えて)宛てにならないユウちゃんだと良いと思います^^^(ごめんなさい・・・。)拍手して下さった方々は有難う御座いました!





















(×閉じる)