「ラ ビ ー」
「んー?ってこらこらこら何してんさ」
仰向けに寝転がって本を仰ぐように読んでいると声と共に柔らかい身体が乗っかってきて思わず下半身が反応しかける。そんなことされる男の身にもなれってんさ。否別に嫌なわけじゃなくて、むしろ大歓迎なんだけど、いきなりこられるとね、驚くっしょ?
「重い?苦しい?」
「そんなこと無いけど」
一瞬不安気な顔をして見せた彼女に笑ってそう返すと彼女もよかった、と笑ってそう返してきた。良いんだけどね。良いけどさ、なんていうか美味しいよなぁこの格好。しかも何か何時もより体温高い気がするさ。服越しに感じる体温が暖かくて眠気と性欲の両方をゆるやかに誘い出していく。
「本読まないの?」
「え、ああ、うん。また後で読むさ」
この体勢で大人しく本を読み続けられる程オレも理性強くないさ。本を適当にそこら辺に放ると、彼女からそう言われ、酷な質問をするもんだと彼女の顔を見ると目が合って首に腕を絡ませられて心臓が跳ねた。首に顔を埋められてオレも彼女の背中に腕を回す。その瞬間に首に走り抜ける痛み。
「イッ、」
「あ、痛い?じゃあコレは?」
「はっ?なっ・・なにして ッ」
直ぐに首筋を噛み付かれたのだと気付いて、声だけで彼女の意図を掴もうと頭が働きだす。それを脅かす様に耳裏から首筋まで舌を這わされて背中が粟立ちつい軽く身震いをしてしまった。じわりと広がる何とも言えない気持ちよさに流されそうになって慌てて体を起こした。
「うわわ、急に何?」
「それはこっちの台詞さ」
「え、えっと・・・やっぱり気持ち悪かった?」
いきなり起き上がったのに驚いたのか動揺した声をあげる彼女にオレの方が動揺する。そしておずおずとそう聞かれてそんなわけがない、と首を振りながら、
「・・・、違う。そんなわけないさ。そうじゃなくて、」
「・・・うん?」
「・・・。ちゅうしていいさ?」
「うん」
口を開きかけた所で、今から叱られる子どもの様な顔をする彼女に、結局言いたい言葉は喉の奥で飲み込んで別の言葉を吐いた。その瞬間の彼女の表情の変わり様ったらない。そんなにちゅーしたかったんか。つーか、もしかして欲求不満?そんな事を頭の中に巡らせながら唇を合わせると、なんだかやっぱり今日の彼女は何時もより体温が高いようだ。
「なぁ、お前酒でも飲んだんさ?」
「? 飲んでないよ」
「熱とか」
「出てないってば。なに?」
唇が当たりそうな位置で口を開いたオレに、彼女はオレの息が唇に当たって擽ったいのか時たま身を捩って笑う。なんだこれ?何で今日はこんなに、なんか何時もと違う違和感に頭の中は疑問符で埋め尽くされる。けれどそんな暇もなく、これまた彼女から唇を合わせられてどうでもよくなった。まあこんな日もありかな、なんて。
のらねこかのじょ
(よくわからないけど、わかるような、そうでないような。とりあえず翻弄される。)
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