「頼みがあるんさ」

「やだ」

「・・・。まだ何も言ってねぇじゃん」










オレの部屋に英和辞典を取りに来たをそのまま腕の中に閉じ込めて早々、離してくれと言わんばかりに腕の中で暴れるの頭をよしよしと撫でてなんとか大人しくさせようとする。つーかオレはいつもの言う事聞いてやってんだからオレも聞いてもらえる権利はあると思うんさ。やっぱ日頃甘やかしすぎてるからこうなんのかなー。親でもないくせに妹の躾について考えそうになり慌てて本題へと(勝手に)話を移すことに集中する。










「明日の弁当はの手作りが良いんさ」

「私料理できない。それと部屋に戻るから離して」

「やだ」

「・・・。それ私の真似?」

「なあー」










弁当ー、ひたすらその言葉を繰り返しながらを抱き締めると不可抗力での持っていた辞書が床に落ちた。それを合図にするわけでもないけれどさっきからオレの頼みに否定的な返事ばかり吐くの唇を自分の唇で塞いで何度も啄む。逸らそうと左右へ揺れる顎をしっかり固定し後頭部にも手をまわしてオレの方へ引き寄せて更に深くすることを強制すると、オレの服の袖に捕まって苦し気な表情を見せるに益々それは止まらない。










「んや、にいちゃ」

「弁当作って?」

「だから料理できな、っんう・・っやめ、ンー」










作ってくれるって言うまでやめてやらん、口にはしなくてもには判るだろうと勝手に期待し喋っている途中の唇に何度も自分の唇を合わせる。段々と側にかかっていく重心やらオレの体重に耐え切れなくなったの体は後ろのベッドへと勢い良く沈み込む。子供じみた我侭な欲求でも全然構わない。兎に角の手作りの弁当を食べたい一心でするこの行動、多少下心があったりなかったり。どれくらい続ければ首を縦に振るかさえ見物だ。が体を起こす前に上から覆いかぶさりまた顎を固定して唇を合わせる。










「は、っんん・・・ べんきょーし、っ」










勉強なんて何時でも出来るし少しくらい休んだところでそんな変化があるわけないんさ。返してやりたい言葉は沢山あっても唇を塞ぐのが忙しくてオレ自身も何も喋れない。柔らかくて生温かいの唇は指の腹で撫でても自分の唇を重ねても舌で舐めても常にオレに一定の快楽を与えてよこす。弁当を作ると言うまでという理由の元でしていてもいつの間にかキスすることに重点が置き変えられたりしても強ち可笑しくはなかったりするわけで、一度し始めると暫く止まらなくなってしまうのがオレの悪い癖だろう。










「た、わかった・・!っ・・んぅ は、・・作 、ってば!」

「ん?」

「んうう! っぷは、作るって言ってる!」

「マジッ!?」










唇が離れる僅かな合間に必死に何かを言うに重ねていた唇を離して目を見ると半分怒鳴る様にしてそう言われた。案外首を縦に振るまでが早くて正直物足りないっていうのは内緒にしておこう。とりあえず弁当を作ってもらえるということで嬉々とした顔をするとはいいから早く退いてと言って来た。連れなさすぎて兄ちゃんとしては物凄く寂しいんだけれども弁当作ってもらえるしまあ良いか。オレはオレが思っている以上にに弁当を作ってもらえるということが嬉しいらしい。例え冷凍食品の詰め合わせでもが詰め合わせてくれるんならそれだけで満足なんさ。・・オレってどんだけが好きなんだ。










「兄ちゃん退いて」

ありがとさ」

「わかったから、重いから退いて」

「うん」










とか了承しながらもう一度唇を合わせるとがオレの肩をグイグイ押して最大限の力で抵抗してきた。あんまり抵抗されるとオレ本気で悲しいんだけどそんな事に判る筈もなく。何となくオレの肩を必死に押してくる手が虚しいからその手を自分の手で握ってシーツに縫い付けた。退けようとするために強く握り締めてきてるのは判ってはいるけれど、そーんなに強く手を握り返されるとオレとしては盛大に勘違いをする。結局オレの気の済むまでキスの嵐に付き合ったが勉強するために部屋に戻ったのは、そうだな・・多分1時間半くらい後だと思う。





















**翌日の昼





















「・・・!」










学校の中庭の石造りのベンチの上で座ってから弁当箱を受け取り蓋を開けて驚愕する。(ちなみにもう図書室では飯食ってないんさ。)(積み重なった些細な事々参照。)ちょっとこれは少女漫画内でも今時珍しい弁当さ。ご飯の上にさくらでんぶでハートが描かれてるんだけどオレどうしたら良いんだろう。そっぽ向いて既に弁当を食い始めているの顔を見ると耳まで赤い。・・・あー、何この子可愛いんだけど何処の子!むしろもうオレの子で良いよ、オレの妹で恋人で妻で子供でいいよ。一生だけでいいさ。オレの頭の中は色んな意味でスパークする。










「食うの勿体無いさ」

「・・・恥ずかしいから早く食べて」

「だから無理だって」

「折角朝早く起きてお母さんに教えて貰いながら作ったのにそれじゃあ意味ないもう作らない」










朝早くだってさ、いじらしいなオイ、本気でこれ以上オレを惚れさせてどうする気さ。正直予想外だこんなの。ちなみにハートの所は母さんが見てない間にやったらしいけれどやっぱ気にしてんのかなー、とか少々この立場に心臓が痛くなるけど今はそんな事気にしてる場合じゃない。できればもう一度でも何度でも作って欲しいから勿体無いけどとりあえず美味しく頂く事にします。オレ今日こんなに幸せで後で何か悪いこととか起きんじゃねぇの、なんて疑いたくなるほどの幸福を弁当とともに噛み締めた。



















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