「迎えに来なくていいのに」
「いいじゃん、どうせ昇降口まで行くのにの教室って途中にあるしさ」
はオレの血の繋がった妹で尚且つオレの好きな人で彼女。大声じゃ言えない様な恋愛かもしれないけど別に大声で誰に言う必要も無いから問題は無い。それで今は学校からの帰宅途中、はオレが毎回教室まで迎えに行くのが気に入らないらしく少々ご機嫌斜め。別に学校でイチャついててこの関係がバレそうな訳でも(多分)無いんだし、そんな気にする事無いと思うんだけど・・・オレは。
「が嫌ならやめるさ」
「・・・。別に嫌じゃない」
「ならいいじゃん」
オレがそう言って笑うとは少し不貞腐れた様な顔つきをしつつ直ぐにうん、と頷いた。本当に嫌がってるわけじゃないなら、オレは迎えに行きたいから迎えに行く。オレ的にはと一緒に居れる時間は多い方が良い。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「帰ったら英語教えて」
「んじゃあ今日は直行で家帰ろ」
「うん」
いつもじゃ少しどこかに寄り道して遊んで帰ったりする事もあるんだけど、今日は家で勉強するっつーことで早々と家に帰った。途中から電車を使って帰らないといけないんだけど、此処がまた問題で今の時間帯は帰宅ラッシュで缶詰状態になる。いつもみたいに遊んで帰れば随分ラッシュ時よりはマシだけど今日は仕方が無い。
「こっち」
「ん、」
当たり前の如くオレはが人ごみに押されて苦しく無いように自分の体の内側にを置く。馬鹿みたいに詰め込まれた車内じゃ必要以上に密度が高くて乗る前に考えるだけで疲れるけど、それもと乗っていれば大した苦痛にもならなくて、むしろほぼ密着に近い状態になれるから苦痛どころか嬉しいくらいだ。
「!」
こうして電車に缶詰め状態にされた時はどさくさに紛れて良くを抱きしめたりするんだけど、その度に驚くはもう本当に可愛い。それでたまに抱きしめ返してくれるから段々これがクセになってくる。で今日はそのたまに抱きしめ返してくれるのを超えて、顔をオレの胸辺りに押し付けて俯いてるわけで、思わずオレもの髪に鼻をつけて他のヤツから見れば完全にイチャついてる様に見えたかもしれない。
「暑かった」
「そう?オレは嬉しかったさ」
電車を降りて一言そう告げるとはそれを誤魔化すように目を泳がせて先を歩き出した。オレはそれを後から追って密かに笑む。駅から暫く歩いて住宅街に入ると一気に人気が減ってくるからそれを良い事にと手を繋いだ。駅で降りたときは暑いと言ったの手は繋いだ時はもう冷たくて、女の子って寒い日でもスカートだから余計大変さね、なんて思ったり。
***
「これは訳すと"彼は私に手紙を書いた"で、"〜に"と"〜を"の二つ目的語があるから」
「第4文型?」
「そう。解かった?」
「解かった、ありがとう」
「ん」
家に着いてオレの部屋で教科書やノートを広げてが勉強を始めてから多分かれこれ4,50分。が聞いてこない限りオレは本を読んでいるかを見てるかしかしないから、正直飽きてきた、というよりに触りたくて堪んなくなってきた。テーブル一枚という少しの間をおいて向こう側にいるに触れられないのがもどかしい。けど俯いている顔を見たり、たまにシャーペンを走らせるのをやめて少し考えている様を見てるのは楽しい。
「!」
「ん?解かんないトコあった?」
「ちが、・・そうじゃなくて」
ふと顔を上げたと目が合ってニコリと笑んでそういうオレに、はどことなく照れて、緊張するからあんまりこっち見てないで、と言った。まさかオレがそんなコトできるわけもなくて、ただの見せ掛けの意味しか持たないでいた本を置いて無理さ、と笑って見せた。・・・また照れちゃって可愛いなーホントに。は男心を擽り易い子だと思う。
「無理って・・・、」
シャーペンを握り締めて困った顔をするにまた笑みが止まんなくて、ひとまず休憩を取ることにした。するとは頷いてから立ち上がるとお茶を淹れてくると言って部屋から出て行った。本当はお茶よりオレに構ってくれた方が嬉しいんだけど折角だからそれに甘えることにして、オレは部屋で暫く一人待つことにした。
「あれ。家にチョコなんてあったさ?」
「この間私が買ったの」
「ほー」
「これすっごく美味しいよ」
「んじゃ貰うさ」
「うん」
紅茶と一緒に見慣れないチョコ菓子をトレーにのせて持って来たは、またテーブルの向こう側に座ろうとするから、オレは隣に座る様に腕を引っ張ってほぼ強制的にそうさせた。暫くとりとめも無いことを話しながらチョコ菓子を食べたりした後、時計を見たはまた勉強を始めると言った。誰に似た律儀さなのかしらないけど、もう少し休憩しても良いじゃんなんて思ったり。
「・・・あ」
「なに?」
「、口にチョコついてるさ」
「うそ、ッん」
本当は口にチョコがついてるなんて嘘で、手で拭おうとしたのその手を引いて唇を合わせた。理由はベタでもとりあえずちゅーできば何でもいい、オレ的には全然結果オーライ。の手を掴んでいる手とは逆の手での腰を引き寄せ更に体をくっつけて唇を合わせる。
「口開いてさ」
「は・・、んん・・・」
の唇を舌で舐めると、嘘の口実で言った筈のチョコのあまったるい味がした。まあチョコ菓子食ってたんだから当たり前だけど、普段から甘そうなにチョコの味が足されてると思うともっとそれを味わいたくなる。オレの言葉に素直に口を少し開けたの口内へ舌を差し込むと、掴んでいたの手が一瞬跳ねた。歯がぶつかりそうな程唇をくっ付けて舌を絡めて吸いあげたりしてると唾液が溢れてきて無用な水音が立って欲求が煽られる。
「っン、ぅうっ」
舌を行き来させたままの手首を掴んでいた手を離して服の上からの胸に触れると、微かに身じろぎをしてオレの手を胸から離させようと今度はがオレの手首を掴んだ。それをお構い無しに頬の内側を舐めるとの上体が後ろに傾いて、そのまま唇が離れてを押し倒す形になった。
「お兄ちゃんっ」
「が可愛いから喰いたくなったさ」
起き上がろうとするの腕を押さえ付けて首筋に舌を這わせ上着の中に手を滑り込ませた瞬間、玄関のドアが開く音がした。多分パートから母親が帰ってきたんだろう。そんなコトを暢気に考えつつ続けてのブラを持ち上げて胸をやわやわと揉むと止める様にが小さく叫んだ。
「あっ、兄ちゃ、ンッ・・母さんがっ」
「が静かにしてればバレないさ」
「っやめて、ダメ、くっ、あぅ」
泣きそうになって快感を口内で噛み殺すにまた唇を合わせると、肩を手で、腹を脚で押されて仕方なく離れるとは息を乱したまま胸元までたくし上がった服を元に戻した。それから本当にほんの少し間を追いて直ぐ、母親がオレの部屋の直ぐ前で声をかけて部屋に入ってきた。
「二人ともいるの?」
「ああ、オカエリ」
「 、おかえりお母さん」
よっぽど焦ったのか、一瞬息をのんでから母親にそう言ったを見てオレが微かに笑うとが思い切り睨んできた。確かにに抵抗されないであのまま続けていたら危なかったかもしれない。今度はちゃんと鍵をかけとこう、なんて懲りないオレは考える。
「ただいま、もう晩御飯食べたの?」
「まださ」
「そう、じゃあ何か食べたいものある?」
「「・・・」」
「じゃあお鍋でもしましょうか」
「そう、だね、私手伝う」
「ありがとう、ラビはどうするの?」
「ああ、オレも手伝うさ」
「ありがとう、皆でやると早いのよ、助かるわ」
元来おっとりして何処か抜けている性格の母親は何も気付いてる様子はなく、手伝うと言ったオレ達に先に支度してるからテーブルの上のものを片付けたら手伝いにきてね、と普段どおりのぽやぽやした笑顔を浮かべて部屋からでていった。部屋のドアが閉まると同時に、息を大きく吐くにまた笑った。
「お兄ちゃんの莫迦」
「鍵閉めんの忘れてたんさ」
「そういう問題じゃないのっ」
ついうっかり、と笑って言うとに怒られた。物凄い恥ずかしかったのか今更顔を赤くするが可愛くて、そのまま引き寄せてまた唇を合わせると頭をポカンと殴られた。
「痛いさー」
「懲りてないお兄ちゃんがいけない」
「懲りないさ。夜また続きしよ」
「ッやだよ」
「んじゃオレがの部屋行く」
「鍵締めとくからっ」
「じゃあ今から続きするさ」
「もっといやっ」
腕を掴んだオレに慌てて逃げようとするが可笑しくて、今すんのは冗談さって言って笑うと夜もしないと顔を真っ赤にして怒られた。そんなに可愛い反応ばっかりしてくれるとそのうち本気で抑えが利かなくなりそう、なんてまさかそんなコト言えるわけもないから、ちょっと笑いつつ黙ってテーブルの上をと片付けて母親の元へと向かった。
掻き消える化けの皮
オレが理解があって優しい兄貴でいられるのもそう長くはないさ。本気でが好き過ぎて何時何処ででも狼になれそうだから。覚悟しといて?。
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