「これ謎解き?」

「そーさねえ。」

「・・・お兄ちゃんわかる?」

「・・・まあなんとなく」






オレの脚の間に座り、一緒になって目の前の画面を見る。オレは後ろからの腹の方に手を回し、の脚の上でゲーム機のコントローラーを握っている。
今日のオレ達は家デートなるものをしているわけだ。ちなみにゲームをしているのはオレであって、やりたいと言っていた当の本人、はそれを見ているだけ。






「私も考えるから待って」

「んー」






何気なしにの脚を撫でると、考えてるから邪魔しないでと肘で小突かれた。
自分からオレの脚の間に座ったくせにそれはないさ。でもまあ小突かれるのは慣れてるから、大して気にしない。取り合えず脚を触るのがダメならと、の小さい肩に顎を乗せて、が進めていいよと言うまで待つことにした。






「さっきの石盤の言葉と関係・・」

「・・、何でそっち向く?」







ふとが訪ねながらオレの顔を見ようと首を捻ると自然と唇が近くなった。無言でそのまま正面に向きなおしたがおかしくて、小さく笑うとがくすぐったいと言って肩を揺らす。
我ながら勿体ないことをしたと思った。今のはキス出来そう、ていうか出来たよな。・・・。ああなんかキスしたくなってきたさ。






「  」






肩に置いていた顎を上げ耳元の近くで、低くした声で一文字一文字をなぞる用にゆっくりとの名前を呼ぶ。はそれに体をびくりと揺らして答え、序にその瞬間から体に針金でも通した様にガチガチに力を入れて少しも動かなくなる。
目の前の画面からは場違いな冒険向きのBGMが流れてきていて、それ以外はオレとの呼吸の音しか聞こえない。いつまでたっても操作されない主人公は暇を持て余したのかその場で技をアイドリングする。






「こっち向いて」






オレの言葉にピクりと小さく素直に反応してみせる肩とは裏腹に、決してこちらを向こうとしないの首。






・・・ふうん、いいけどね、別に。
そんな呟きを飲み込みながら、の首筋にそっと唇を当てて軽く吸ってみる。と、は弾かれたようにオレから離れた。咄嗟にその腕を掴めば振り返りオレを見る。






「・・・」

「どうしたんさ」






今オレが吸った場所を自由な方の手で押さえてオレを見るの目は既に涙ぐんでいて、顔は赤い。これ以上のことをいつもしてるのに、未だに見せるこの表情がたまらない、とか言ったら少しおやじくさいんかな?・・・まあいいや。
掴んでいた腕を軽く引っ張れば容易くオレの胸に傾く体。それを受け止めて背中に手をまわして更に引き寄せると小さく抗議するような声でお兄ちゃんと呼ばれた。






「ゲーム、・・お兄ちゃん、」

「うん?」

「・・・、」






構わずに額と額をあわせ、唇と唇が直ぐ触れる位置まで顔を近づける。ゆらゆらとオレを見ては直ぐそらすその瞳を、目を細めて見続けていれば気恥ずかしいのか、その瞳は俯いたままになってしまった。
少しでも動けばキス出来てしまう、けれど、オレは未だそうしようとはしない。
普通に話を聞いている時の様に、けれど声は潜めて囁く程度に、そうして相槌をうって話の、言葉の先を、促す。






「お・・お父さんとお母さんが・・」

「うん」

「二人が起きてきたら、」






気づかれたらとか、見つかったら困るとかの話らしい。今まで数え切れないほどキスしてきて、何を今更。でもそんな所もまた可愛いわけで。使い古したくても親と同居している限りそれはできない、がコトに対して抵抗する理由。けれども力ずくで逃げようとしない辺り、今更だと判っていて使っているんだろう。
偶に掠めていくようにしてほんの少し触れる唇に、気を取られながらも気づかないフリをして話を続ける。






「さっきだってキッチンでキスしたじゃん」

「!・・あれは、」






もう1度からして欲しいさ。
息のかかる距離。ほんの少しオレに近づけば直ぐにでもキス出来てしまうじゃないか。こんなにも簡単なのに、・・さっきのキッチンでの勢いは何処へやら。黙り込んで頬を紅潮させ、困ったという雰囲気を滲ませるに、オレからはただただ小さい微笑が零れた。






「ッひ ん、んっ」






どうやらには少し動くことも大変なことらしいから、少し手助けをしてやることにした。
の背中に回していた手を、身体のラインに沿うようにして腰までなぞる。瞬間その身体が小さく跳ねて、上ではぶつかるようにして唇が重なる。オレはそれを受け入れて、・・・そこからはもう離さない。








「 ん、」






角度を変えるために唇が少しだけ離れた合間、オレは無意識にの名前を呼んでいた。
唇を食むようにして、舌先で何度かなぞってやれば、今まで多少突っ張っていたの手は遠慮がちにオレの首へと回される。
お前が求めてくれんなら、オレはいくらだって応えてやるさ。そしてその逆もありだと思いたい、自分に優しく都合の良い感情。






「は、おに、ちゃん・・」






唇の間から零れてくる甘い吐息と声に、オレの気持ちは簡単に高揚する。
触れた唇以外に脳の奥からも感じる気持ちよさ。これは絶対に以外からは感じられない。通年の如くすぐにでも舌を差し込んで更に深いキスをして、の口内を味わいたい所だけど・・・。
一度唇を離して余韻に浸りながらそんな事を考える。しかしオレがそんな事を考えている間にも、気持ち物足りなく感じているのか、は自分の舌で唇を舐め、甘噛みまがいに軽く食い縛しばってみせる。何度もチラチラとのぞく赤く濡れたその先端に貪りつきたい衝動がわく。
オレはそれを振り払いながらの腰にまわしていた手、指を、今度はの唇へと這わす。指の腹で柔らかく微かに湿った唇をふにふにと押し撫でて、少しだけ開いた唇の間から指先を挿し込んだ。






舐めて。
そう言えばは素直にオレの指を咥え込み、覚束無い様子で指に舌を絡める。舌と唾液に絡め取られて滑るのを良い事に、時たまの舌から逃れ、歯列や頬の裏を撫でた。少々指を奥に押し込めば小さい呻き声をあげる。
オレの首にまわされていたの腕は、肩まで落ちてきてそこの服を握り締める。






「歯はたてちゃダメさ」






別にオレ自身を口淫させているわけではないけれど。
知らぬ間に笑みを含んだ自分の声に苦笑した。に指を咥えさせたまま、オレはの耳元に唇と舌を這わす。耳朶を甘く噛んでその裏を舐めると、ちゅっという濡れた音と共にの小さい喘ぎが響いた。
ちゃんと舐めてないとお仕置きするよ。そう囁きながらの舌をグッと強く押す。するとは多少苦しそうにして、オレはそれにひどく興奮する。






髪を纏めて梳き流すとシャンプーやボディソープの匂いに混じり、自身の匂いが鼻先を擽った。
オレはこのの匂いがたまらなく大好きで、愛撫の途中であろうが公衆の面前であろうが、構わずに直ぐに掻き抱くようにしてきつく抱きしめたくなってしまう。そうしてオレがぎゅっと抱きしめた後、そろそろとオレの背中にまわされてくる細い腕にも期待してしまう。
・・、オレの体が一つだけでなかったならば、一度にしたいことは山ほどあるんだけれど。






「ん、・・・ふ、ッ」






露出した項に近い首筋を舌で舐め上げて薄い皮膚を噛めば、口内でオレの指を愛撫しているの舌の動きが鈍る。けれども直ぐに爪や指の形をなぞるようにして舌先で舐めて最初に言ったことに忠実でいる。オレはそんなに薄笑いを浮かべながら、空いている片手を柔らかい胸の上へと移動させた。
耳元で響くの濡れた吐息に後頭部が熱くなる。





















(07/12/23)