風邪をひいた。自己管理が出来てないからだ、とか神田に言われそう。ああなんかもう・・・考えるのも億劫になってきた。頭は重いし、何より寒いし、なのに体が溶けそうな感じがする。今日任務あったっけ・・・?


















は僕と君の福論



















「かぜぇ!?」

「んー」









食堂で昼飯のグラタンを口に入れながら、目の前で驚いた声をあげるアレンに、まあ無理も無いかと思いつつ、今頃ベッドで熱に魘されつつ眠っているであろうを思い浮かべた。今日の朝起きた時からの様子は変だった。起こしても起きあがらない・・・というか起き上がる気力が無いらしく、呼吸がやけに浅くて速く、はっとして額に手を当てたら朝方の体温だとは思えない異常な熱さだった。









「で、さんの具合どうなんですか?」

「ん?んー・・・まあちゃんと寝てるし、リナリーに解熱剤とか貰って飲んだから多分3,4日で治るんじゃね?」

「よっ!?・・・そ、うですか。」

「だからは暫く部屋から出ないし、部屋にはオレ以外入らない(入れない)から」

「え、お見舞いもダメなんですか?」

「ダメさ」









無理して大口開いてグラタンを3口で食べ終わらせ立ち上がると、アレンも慌てて口に食べ物をつっこんで立ち上がった。二人してジェリーにご馳走様と言って其々の部屋へ向かいながら喋る。(つってもオレはの部屋に向かってるんだけど。)3,4日、最低でも完治するまでにはソレ位必要だろうと見越して言った言葉に、自分でも心配になった。









「何でお見舞いもダメなんですか?!」

「お前にうつったら困るし、がゆっくり休めないだろ?(それにオレがヤだから)」

「ええー!今日はさんの誕生日なんですよ?!」

「だーかーらー尚更ダメなんさ。・・・。風邪は引き始めが肝心って言うっしょ?」









オレの言葉に食って掛かるアレンを宥めつつ、ほらお前の部屋ココっしょ?と言ってアレンを残し、足早にその場を去った。後ろから大きな声で何か叫んでるアレンの言葉は聞き流して。そう、今日はよりによっての誕生日。こんな大事な日に風邪をひいてしまったが可哀想というか、できる事なら変わってやりたと思った。が、オレはある事に気づいた。風邪をひいてるという名目で(まあ実際風邪ひいてんだけど)は部屋から出ないし、もちろん風邪がうつったりすると困るから部屋には誰も入らない。病人の所にバタバタと人が来ても疲れさせるだけだと皆が皆判りきっている、から、実質と一緒にいるのは、誕生日のこの日にが会うのは、オレだけ、という事になる。の誕生日を思いっきり独占できる。正直が風邪をひいてくれて嬉しい。









「・・・









できるだけ音を立てないようにして部屋の扉を開けてそっと中へ入った。ベッドの上のふくらみは、早くて浅い呼吸に合わせて静かに、微妙に上下している。そこへ近寄っての顔を見ながら小さく声をかけた。それに微かに反応して瞼が少し上がっても、また直ぐに閉じてしまった。まあ病人なわけだし起こすとかそんな事はしちゃいかんさね。オレはそのままベッドの横に椅子を持ってきて座り、時たま額の上のタオルを冷やしてまた置いた。が寝るのを邪魔しないように、極力読書をしていたが、ずっと苦しげに眠り続けているのを見ているのは正直心臓に悪い。さっきが風邪をひいてくれて嬉しいとは思ったけど、やはり早く治って欲しいと思う。









「 らび・・」

「ん?」

「・・・」

「・・・?」









日もだいぶ傾きかけてきた頃。半ば空気に溶け込んでいるような、小さな声で名前を呼ばれたから本から目を離してを見たが、何の反応も無かった。試しに一度問いかけてみても何の反応も無く、は変わらず眠っていた。暫く理解できなくてぼけっとして、寝言だという事に気づいて嬉しくなった。そんなの頭を(多分物凄い笑顔で)優しく撫でて、顔にかかっている髪の毛を梳きながらどかした。



















暖かくて優しくて大好きな・・・
頭が異様にぼうとしていて体が上手く動かせないけど
とても気持ちがよくてこのまま眠ってしまいそうな
なんだっけ、この感じ誰かに・・・









私は長い夢を見ていた




















「ラビ」

「ん?」

「・・・ラビ」

「あっ起きたさ?」









夜も8時を過ぎたころ、ふとまたに名前を呼ばれて覗き込むと、今度はウツロながらも目を開いてオレを見ていると目があった。ほぼ一日寝ていたから久しぶりに声を聞いて目を見たような錯覚に陥ったけれど、それは直ぐ消えて安心がじわりと広がった。気だるそうに上半身を起して、オレの手を握ったの手は未だ熱かった。









「起き上がって平気なん?」

「ん・・・へいき・・・」

「喉渇いてない?腹へってない?何か口に入れないと」









起きたからには何か栄養とか水分をとらないと治るものも治らない。握ってきたの手を握り返しながら、開いている片手でベッド脇の台の上にある水入れからコップに水を注いだ。寝起きってただでさえ現状がよくわからない上に、は熱があるんだから相当頭がぼやけているはずだ。目が覚めて起き上がっても、いつになく弱々しいに、また心配する気持ちと変わってやりたいと思う気持ちが出てくる。









「ラビ」

「ん?」

「私 風邪・・・」

「うん。熱出して、今日一日寝てて、」

「・・・ラビ、ありがとう」

「えっ、・・あ、いいんさ!そんなん!」









やっぱりハッキリしていないらしく、軽く説明すると唐突に改まってお礼を言われて驚いて一瞬固まった。それと段々気恥ずかしさと嬉しさとが出てきて、無駄に元気に(?)言葉を返してしまった。そしてそれを聞いたが柔らかく笑った。









「とりあえず、何か食べるさ?」

「・・・うん」

「ジェリーに頼んでおかゆとかプリンとか作って貰ってあるんだけど、何が良い?」

「・・・おかゆ、が良い」

「わかったさ、持ってくるから待ってて」

「うん」









部屋から出たオレは、食堂へ向かって走った。









途中でアレンやコムイや・・・其の他ETC...に会って、プレゼントを渡すように言われたけど急いでるからと誤魔化して拒否した。誰が渡すかって。今日の誕生日を祝ったりプレゼント渡すのはオレだけでいいっつーの。









「おまたせっ」

「・・・ラビ、これ」

「あっ」









少々息を切らして部屋に戻ると、が手に小さな箱を持っていて、それはまさしくオレがあげようとしていたプレゼントで・・・ひとまず持っていたおかゆを台の上に置いた。









「それ、誕生日おめでとって言って渡そうかと思ってたんさ」

「誕生日?」

「そ、今日の誕生日さ」

「!・・・忘れてた」

「ははっ」









少し起きていたせいか大分顔に生気が戻ってきたは、自分が誕生日だったという事をすっかり忘れていたらしく、最初はぽかんとした表情を見せた。まぁ風邪ひいて一日寝てたんだから無理もないさね。だけど台の上にプレゼント置きっぱなしにするとはオレも油断してた。今更だけど、ちゃんとオレから渡しなおそう。









「それ、一回オレに貸して?」

「? ん」

「で、はい。改めて誕生日おめでとう。生まれてきてくれて有難うさ!」

「・・・っありがとう」









きちんとプレゼント渡しなおすと、ははにかんだ笑顔をオレに向けてお礼を言った。っつーか今の滅茶苦茶可愛かったさ。とか惚けてたら頬に軽くキスされた。









「・・・!」

「・・・風邪うつると困るからホッペだけど、」

の風邪なら大歓迎さー!」

「それは困っ・・・」









少々照れながらもしてくれた行為(好意)に、相手が病人という事も頭からふきとんで、嬉しさの衝動での唇に自分のを合わせた。熱があるせいで元々赤かった顔に、ますます赤みがかかって更に愛らしくなる。もう本当だったらこのままとイイコトする予定だったんだけど、それはまた次のお楽しみにしよう。今日はとりあえずゆっくり休んでの風邪を少しでも早く治さないと。









「・・・風邪うつっても知らないよ、」

「心配性さね、は。あっそだ、おかゆ冷める。」

「あっうん、」









唇を離した後に照れ隠しかそう言ったの頭を撫でて、台の上に放置されたおかゆを手にとった。時間もそれ程経っていなかったから丁度いいくらいの熱さで、それをに渡・・・あ。









「あーんしてやるさ!」

「!?」

「今日誕生日だから、の身の回りの事何でもしてやる、あとして欲しい事もなんでもするさ」

「いっいやいや、自分で食べれるから、そんくらいできるし、」

「まーまー」









して欲しい事は何でもするっつーかほぼオレがしたい事なのかもしれない。けど、今日はとりあえずの言うなりで行こうと思う。そーゆーわけで、必要ないと言うの口元に、スプーンですくったおかゆを持っていってアーンとか言ってみたりして。(言うなりじゃないじゃんとかは聞こえないさ)









***









「ごちそうさま、でした」

「もういいんさ?」

「いい」

「んじゃあと薬飲んでー、」









一通り食べた後に、がそう言ったのであと少々残っているおかゆは台の上に置いた。流石に食べる度に毎回アーンとか言われたら食べずらかったかな?とは思いつつオレが満足してるからいいや。何かちょっと拗ねてる(?)にコップを渡して固形の薬3個を紙包みの中から出して渡した。









「ん・・・く・・」









は固形の薬を飲むのが苦手らしく、口に薬を含んで水で流し込もうとしているんだけど、どうも一回で上手くは飲み込めないらしい。そんな所まで可愛いとか思うオレは多分重症だからどうでもいいや。職業聞かれたらブックマン兼、愛好家(恋人)ですとか言おうなんて下らない事を考えたりした。









「・・・口移しで飲ませてやろっか?」

「・・・『コクンッ』」

「あっ」









ちょっと飲むのに梃子摺ってるみたいだから、ベッドに手をついてにそう言った直後、は今までの事が嘘の様にすんなり飲み込んだ。・・・。わざとさ?ちょっとオレ今傷ついたんだけど。・・・。こんな事くらいじゃめげないけどさ。









「じゃ、飯食べたし薬飲んだし、後は暖かくして寝るさー」

「うん」









今の事にはあえて触れず、がベッドに沈むのを見て布団をかけ、また額に冷やしておいたタオルをのせる。そしてオレはまた椅子に座って本を読む。この分だと明日には熱も下がりきるかもしれない。









「ラビ」

「ん?」

「ラビは寝ないの?」

「だいじょぶさー」

「私もう大丈夫だよ」

「んー・・・まあオレの事は気にしないではゆっくり寝るさ」

「・・・。ありがと、ラビ」

「どういたしまして」









寝返りをうってオレを見て喋るの頭を撫でて、寝るように促す。オレの言葉にあんまり納得はいかないみたいだけど、素直に瞼を閉じて眠りに付くに、今日何度目かわからない愛しさがこみ上げた。









早く元気になってちゃんと誕生日やりなおそうさ、









(×閉じる)




























ちょっとヒトコト。
誕生日プレゼントの中身は皆さんのご想像にお任せします。
小さな箱に入るもの、決してアレ(←?)とは限りませんよ。
そんな所まで楽しんで頂けると嬉しいかな、と。
ではシュチュエーション提供有難うございました!