「あああのラビさん」









なんていうかそう、これってアレだ、あの飲み屋?じゃなくて夜のお店?で酔っ払いが必要以上にお姉さんの太腿とか触ったり胸とかを触ったりするアレに似てる。世間的にはセクハラっていうけど私達の場合そのセクハラという言葉が通用するかわからない。っていうかむしろ通用しないと思うわけで。だって一応ラビさんとは正式にお付き合いさせて貰っているわけでして。









「さん付けなんて他人行儀やめろって」

「すみません今すぐやめさせますんで続き話てくださいごめんなさい本当すみません」

「いたたたた痛いよそれちょっとマジで痛いさ!」

「痛くしてんだよ!」

「あの、やっぱり続きは後ほどにまた、教団に着いてからでも遅くないですし」









すみません本当すみません、気分害されましたか?って聞くまでもないですよねウフフ本当ごめんなさいなんてお詫びしていいか!日本特産の緑茶とか国から送ってもらいますんで本当お手間かけさせてごめんなさい。ファインダーの方に必死に頭を下げて謝る私をよそに、私の太腿を擦るっていうか撫でてくるラビのその手の甲の皮を思い切りつねり再度ファインダーの方に頭を下げた。ファインダーの方は慌てて大丈夫です、と言って気を利かせてくださったのかこの現状に飽き飽きしたのか、少し教団と連絡をとってきますと言って別の車両へと言ってしまった。ああもう本当ごめんなさい。任務終了後の報告書類についての話をする筈が先延ばしになってしまった。それもこれもラビのせいだ、と言いきりたい。









「もういいさ?」

「へ?」

「もう話終わったんしょ?」

「終わったんじゃなくてまた教団に帰ったら話なおすの!」

「ふうん」









え、ねえ「ふうん」てそんなあたかも他人事の様に。一応君も今回の任務に参加してイノセンスとかアクマとか関係あるはずなんだけど!って早速聞いてねえよこの兄ちゃんもうちょっと教育を受けたほうがいいんじゃないの?絶対小学校で先生に「静かにしなさい」とか「話を聞きなさい」とか言われてたよこの子!おかしいな、なんか付き合い始めの頃はこんなじゃなかった筈なのに。私の太腿を触るのは日常的なというかもうむしろ習慣なんさ、とかさらりと言い放った後にまたも私の太腿に手を置いてなで始めた。うん別に手を置くくらいなら許せるんだけどなんか撫で方がやらしいっていうかお前は本当にどっかの酔っ払いのエロオヤジか!









「失礼しちゃうさー、好きだから触っていたいって判らない?」

「それ絶対使い方違うよ!」

「違わん。なあオレちゅうしたいさ」

「お1人でどうぞ」









そんな器用な事できないとかちゃっかり返事を返しながら私の後頭部に手をまわして来るから慌てて席を立ち上がると腕をガッチリと掴まれてしまい、結局その場から動くことができない。下からにまにまとした笑顔を向けて私を見るラビに眩暈がする。なんていうか、本当最初はこんな人じゃなかったのに。そんな感傷に浸っていると汽車は少し傾いて慌ててバランスを崩さない様に脚を肩幅くらい開いてなんとかしのいだ。けれどそれがいけなかった。









「なっ・・ちょっ、ラビ!」

「やわっこいー」









やわっこくて悪かったな!ってそうじゃなくてこの体勢は非常によろしくない。私が肩幅くらい開いた脚の間にラビはすかさず自分の片脚を入れると腰を引き寄せてジャストラビの顔の高さにある私の胸に思い切り顔を埋め込んできた。ちょっとちょっとちょっと公衆の面前でこういう行動は慎まないといけないと思います!「全然公衆の面前じゃないさ。此処って個室だもん」・・・。でもドアの向こうの廊下を誰かが通ったらどうすんのさ!っていうか顔ぐりぐり押し付けないでよ何か変な









「何か変な気分?気持ちい?」

「ちげえよ何でそう自分に都合よく解釈しちゃうの!」

は照れると言葉遣いが荒くなるんさ」

「ちがうっつのねえマジでやめようよ、 あっ私外の空気吸いたい!」

「なら窓開ければ?」

「・・・。」









なんていうかもう尻撫でられたり胸元に顔埋められて息が服越しにかかったり物凄く居た堪れない!それから尻撫でてる手が脚に下がってって段々そのまま上に上がってきてるのも居た堪れないあわわわわわ!ちょ!もうこの際こんな所でこのままセクハラを受け続けるならこの無残な状態を晒す代わりに誰かに助けてもらいたいよ、すみませんこの人痴漢です・・・!つーかファインダーさんは何時まで連絡とってんだよお前は長電話が趣味の主婦ですか!









「ねえラビ、やめて?」

「ん?もっとして?」

「・・・。(どうして逆の意味になるんだろう・・・。じゃあ試しに)・・うんもっと」

が満足するまでシてやるさ!」

「ちょーっとまったー!今の凄い嘘!アメリカンジョーク!ブラックジョーク!アイアムジャパニーズ!」









違う!落ち着け私やつのペースに飲み込まれるな莫迦、常に冷静に慎重に・・・してられないっつーの!あああ誰かこの暴走する痴漢ラビット止めて下さい何でもしますから!私の祈りが即座に通じたのかラビは今まで触っていた脚やら胸から手と顔を離し、その代わりにすく、っと立ち上がり私の両肩をがしりと掴んで真面目な顔してこう言い放った。









「今止めといたら後で何でもしてくれるんさ?」

「・・・!(なんか壮大な勘違いをしてる可哀想な子が目の前に!)」

「オレ前から言おうと思ってたけど言い辛くって黙ってた事があって」









此処でうっかり「何?」なんて聞いたらそれこそラビの思うツボなのだ!誰が聞いてやるもんかと両肩におかれた手を振り払い颯爽と個室の扉を開けて出て行こうとした矢先に後ろから、まあよくもそんなに大きな声が出せるもんだっつーくらい大きな声で、









に猫耳と尻尾つけて擬似獣姦したかったんさ!」









何だ何だ今の破廉恥極まりない男のロマンの声はとぞろぞろと隣やその向こうの個室から出てくる他の客に後ろに立っているラビを窓に打ち込む勢いで蹴って私自身もその個室に飛び込み鍵をして小さい窓のカーテンを閉めた。残念ながら窓にヒビが入るほどの強さではなかったらしく後頭部やその外諸々を強打したラビの頭の周りには星がチカチカと飛び回っているらしいが、手ごわい事にまだ意識がある。・・・つーかさっきの出てきた乗客の声の中に男のロマンとか聞こえた気がするんだけど多分空耳アワーだよね。どの世界の男もそんなんだったら私このさき一生処女でいるがな。むしろそれが正しいのではないかと思う。









「っ――、・・・今のはマジいてぇ」

「さっきの発言の重さに比べればまだ軽い痛みだと思います。」









とりあえず外の騒ぎがおさまるまで(っていうかいつまで騒がしくなっとんねん早く撤収しろや!)この個室から一歩でも出ることは死を意味する。ラビの声を周りの乗客に聞かれたらそれこそこの汽車での家路はデスドライブになりかねない。しかしどうしてくれようこの変態。もうなんか私本当にこの人の彼女なのかな?ちゃんとお互いの了承を得て付き合ってるんだっけ?私催眠術でもかけられたんじゃないの?









はオレが好きでたまらんから付き合ってるしオレものこと好きで好きで好きで好きでもう今すぐ食べたいくらい好きで付き合ってるから決してそんな催眠術とかうさんくさい悪徳な契約じゃないから安心してオレに身を委ねるといいさ!」

「そんな言葉をノンブレスで言い切るなんて」

「褒められても困るさー」

「・・なんかもう、ラビ、汽車の窓から首だけ出してくんない?」

「それってどんなプレイなん?」









ダメだどんな会話をしてもラビのペースになるよ!人生は諦めが肝心ですか師匠!あ、私師匠いないんだった!アレン君みたいな師匠がいても嫌だけどいないのはいないので寂し









「じゃあオレがの恋人兼 師匠兼 保護者兼 婚約者兼 夫で。」

「図々しい上に多い!そして心の中の言葉に介入してくるのやめてっていうか何で聞こえたような口ぶりなの私全部口に出てるの?」

「出てないけどなんとなくの考えてることは判るんさ!」









・・・うわああああもうなんかこの際口に出てた方がヨカッタヨー!このお兄ちゃんマジで気持ち悪いんだけど今すぐどこかこの人のいない遠くの遠くのとおーくの国へ行きたいんだけど!ブックマンてこんな人種しかいないの!?じゃあおじいちゃんもこうなの!?ブックマンて人の心まで読めるの!?そんな話聞いたことない、こいつこそノアよりも質悪い超人じゃねえか!









「超人でも何でもいいからとりあえずちゅうしない?」

「どんな・・・!」

「そんな。」









うわーうわーやっぱり聞こえちゃってるわけですかこの心の声が貴方何者ですか本当に人間ですか?っていうか今すぐその顎に添えてる(むしろ固定してる)手を離せ!聞こえてんでしょ離してよちゅーなんてしたくない!やだ!









「黙ってないと此処で押し倒すさ」

「!」









私口じゃ何も言ってないのに!やっぱり聞こえてるんじゃねえかゴラァ・・ア・・アアアアこっちの意見そっちのけで唇合わせてくれちゃったり付録で腰に腕まわしてガッチリ抱き寄せてくれちゃう辺りやっぱりラビって変態さんなんだぁ!つかあの、息継ぎしないと苦しい、ラビさん苦しい。いつまで唇合わせといてくれるつもりですか、酸欠になる酸欠、酸素下さいさんそさんそさんそ・・・!









「ぷはっはぁっ・・」

「角度変えた時とかちょっと唇が離れたら息吸うさ」

「どんなアドバイス!?」

「もっかいほら練習」









練習ちゃうわ!とかせわしなくツッコミを入れるのもなんか本当つかれてきたんで普通に実況中継だけにしていいですか、もうなんかどうでもいいや疲れました。それにしてもキスする度に私が思うのは、男の子の唇なのにラビの唇は案外柔らかくて気持ちがいいってことで。拒絶しまくってる筈がどうしてかいつも変な方向に転がって転がって転がったあげく絆されるんだけどこれってやっぱラビが変態だからでしょうか。詐欺師だからでしょうか。それともやっぱり私自身に色んな責任があるからでしょうか。誰か教えられるもんなら教えて下さい。









そしてファインダーさんは本当に何時になったら返ってくるんですか。



















恋とはかくも不可思議なモノ也


To なつみさん * From あるすとろめりあ:あめ:07/04/10