神出鬼没っていうのは少し悪い言い方かもしれない。傍に居て欲しいと思った時にひょっこりと目の前にあらわれてくれる彼が大好きで仕方が無い。テレパシーなんて口にするだけでも笑えてしまうけれど、彼、ラビの行動を見てると案外そういうのも有りかもしれないって思えてくる。



















それはによく似た精神感応



















「下着忘れちゃっ・・!?」

「あ。出てきた。お邪魔してるさ」









多分気付いてないとは思っていたけれど、そこまであからさまに驚かれるとオレだってちょっとへこむ、っつーかそう考えるとってかなり無用心で鈍くて逆に心配になってくる。今の台詞からすると風呂入ったけど下着忘れて、それでタオル一枚だけ巻いて部屋に取りに来ましたって感じなんかな。もうなんか、ちょう無防備で思わず襲いたくなっちゃうのが本音だったりする。









「い・・・いつ来たの?」

「さっき。」

「そ・・っか、気付かなかったよ」

「ん、ごめん。風呂入ってたし邪魔しちゃ悪いと思ったから黙って上がらしてもらったさ」









ジーンズのベルトから後ろのポケットに繋がる鎖の先に付けられている財布の中から鍵を出して見せて笑った。これはオレとが付き合い始めた時に貰った、の部屋の合鍵。もちろんもオレの部屋の合鍵を持っている筈で。仕事の関係で一緒には住んでいない故に持っているものだけれど、合鍵とかいう響きとかその鍵の存在理由自体が気に入っているオレとしては、それも有りかな、って思える。こうして黙って来て驚かしたり(今日は驚かそうとは思ってなかったけど)、そういうのもできるし。つーかそんな事を説明してる間にもオレはの事が気になって気になって仕方がないんだけどこれからどうしようか。









「下着取りに来たんじゃねぇの?」

「あっ、そうだった、うん。そうなの」

「・・・。」

「え、な・・ラビ?」









何となくこのままベッドに持っていきたい気がするんだけれど、なんか疲れてそうだし今日は我慢するか。の顔を見たまま、口に指を当てがって首を傾げてそんな事を考えていると、は不振に思ったのか些かたじろいで見せた。・・・いかんさ、思わずガン見っつーか最早視姦する勢いで見てたかもしれん。自分を一度律してになんでもないさ、ごめん、と謝ると不思議そうな、安心したような顔をされた。・・・安心したような、って事はやっぱりオレってばさっきそんな視線だったんかな。









「ラビは夕ご飯食べた?」

「まださ」

「そっか、じゃあ作るから一緒に食べよう?」

「うん」









オレの横を通り過ぎてクローゼットの扉を開き、その扉の影に消えたと、まだ半分心此処に在らずな状態で話をする。今横を通り過ぎた瞬間に鼻先を掠めた石鹸の匂いだとかタオル一枚のだとか、多分そのクローゼットの扉の影で着替えているの姿だとか、オレって結構煩悩の塊っぽい、なんとなくそんな自分の思考に項垂れる。そして部屋着というかパジャマで出てきたは可愛らしく笑うと、直ぐに作るから座って待ってて、と言ってそのままキッチンへと立った。









「・・・

「ん?」

「飯、もうちょっと後にしない?」

「え?だってお腹減ってるんじゃ、」

「・・減ってっけど、なんつーか・・・も疲れてるっしょ?」

「? どうしたの?」

「ちょっとコッチ来て」









オレの言動がそんなにも可笑しかったのか、小首を傾げて笑いながら素直に近寄ってくるを一度ぎゅ、っと抱き締めてそのまま手を引いてリビングのクッションの上へと座り込んだ。を後ろから抱きこむ様にしてオレの脚の間に座らせて、少しの隙間もできないように限界までの背中に張り付き、前へ腕をまわして抱きしめる。言いなりになりながらも時折擽ったそうに身を捩るに自然と口元が綻ぶ。









「ラビ?」

「んー?」

「ねえ、どうしたの・・・?」

「・・・んー」









洗われて直ぐ故に何時もよりもふわふわして良い香りのする髪に鼻を埋めての問いかけに緩く返事をする。暫く自分自身考えた後、今は物凄くを甘やかしてやりたい気分なんさ、そう返した。するとは小さく笑って見せて、じゃあお言葉に甘えます、と言ってオレに体を摺り寄せてきた。オレ、のこういうとこ物凄く可愛くて好きなんさ。今まで以上に、ヤバイくらいにが好きになる。の前で組んでいた腕を解いて、片方の手での髪を梳きながら、もう片方の手はの手を握った。









「夕飯、オレが作るさ」

「ほんと?嬉しいな」

「だからもう少しこのままが良い」

「 、お好きなだけ」









また小さく笑って見せたのこめかみにキスをするとそのまま唇までなだれ込んだ。柔らかいの唇の感触を確かめるように、何度も押し付けては離し、その唇を自分の唇で挟む様にして、結構長い間そうしていた。すっかり体の力が抜けてオレに寄りかかるの頭を撫でて他愛も無いことを話しては笑う。が稀に零す疲れた雰囲気に、今くらいはそれを遠慮しないで出して欲しいとは思いつつも、口に出すところまでいけない。だからどうかこの行為で伝われば良い、そう思いながら頭を撫でたり、手を繋ぎなおしてみたりする。(俗に言う恋人繋ぎってやつ。)









「・・・なんか眠くなってきたかも」

「へ?マジ?」

「だってラビが頭撫でてくれたりするから、」

「あ・・・これ嫌?」

「まさか。気持ちいいよ、もっとして ?」

「 、良いさ、それこそ好きなだけしてやる。」









一瞬動きを止めたオレの手に、軽く首を振っては笑った。多分骨抜きって言葉はこういう時の為にあるんじゃないかと思う。気持ちいいだのもっとしてだの、ちょーっとだけ勘違いしそうな台詞故に男としての攻め心も出たりするわけで。疲れてるのをなるべく言って欲しいとか、それを出来る限り癒してあげたいとか思う前にその台詞はかなり反則だと思うんさ。ホンの少しだけ、そう自分に言い聞かせながらの首に唇を押し当てた。









「っひ、ぁ・・ラビ、」

「なにさ?」









そのまま首筋に舌を這わせると上ずった声をあげたに一人笑むのが止まらなくなる。あくまで優しめな声で返すと、耳元で喋ったのがいけなかったのかが微かに肩を揺らした。あんまり良い反応されるとナニかの糸が軽くプチンと切れちゃうから程々に、そう思っても頭と体はいつも矛盾しているのが基本で。頭を摺り寄せてぐりぐりと動かした後にそのまま耳の裏を舌でなぞると今度こそは体を大きく捩った。









「っん・・」

「くすぐったい?それとも気持ちいい?」

「ぁ、っ・・はぁ・・・んん、」

はこうされんの好き?」









最初の問い掛けには可愛らしい鳴き声で、次の問い掛けには小さく頷いて返したに理性とかいう部分がぐらぐらと大きく揺れる。"ホンの少しだけ"それって一体何処までなんだか。とりあえずそんな面倒な事は流れに任せることにして、このを愛しく想う気持ちと少し苛めてやりたいと思う気持ちのままに行動してしまおう。それに忠実になるべく舌を耳の中へ侵入させるとは肩を竦めて無意識の内に小さな抵抗をして見せた。









「はぁ・・っぁ、や ラビッ」









耳朶を口に含んで歯で甘噛みして舌で舐め上げると吐息を漏らして首を曲げてオレの口から耳を離した。流石に今のはやり過ぎたかな、そう思って首を曲げた事によりいっそう露になった項やその周辺の首筋に顔を埋めると握っていた手にぎゅ、っと力を入れられて一瞬だけ、本当に一瞬だけこのまま押し倒してしまおうかと邪念が横切った。少しだけ息を上げるの顔を後ろから覗き込んで一度だけ唇を合わせると更に催促する様な微かに濡れた瞳で見られてやり過ぎたと確信する。











「ん・・」

「続きしたい?」

「・・・、」









一瞬戸惑うように目線を泳がせた後、顔を上気させて頷いたに自分でも酷な事を言う様だと思いながら、じゃあ飯食った後にいっぱいシよ、と言うと飯の事を忘れていて今思い出したのかハッとして見せたから軽く笑ってしまった。それが気に召さなかったのか、恥ずかしかったのか、多分後者だけど唐突に唇を合わせられて今度はオレが驚いた顔をすると、が小さく舌を出して笑って見せた。その行動にも表情にも軽く射抜かれてしまったオレは、飯の後に優しく甘やかすようにシてやれるかなんてちょっと自信が無くなる。が悪いわけじゃない、けどそんな反応ってかなりいけないと思うんさ。煽られると直ぐノっちゃうオレとしては、尚更。









「あのね」

「うん?」

「ありがとうラビ、大好きよ」

「 、オレもが大好きさ」









もしかしてはオレの気持ちを全部読んでる上でそういう発言をしてるんじゃないか?思わずそう疑いたくなるその発言とは裏腹に、またも胸中を覆いつくして行くこの嬉しさとへの愛しさと、さてこれをどう消化してやろう。とにかく先ずは料理から腕を揮ってみますかね。それが一番最初の、可愛くて愛しいオレのへの精一杯の精神感応さ。



















Dear 緋館さん * From あるすとろめりあ:あめ:07/04/08
I Love you eternally.I pray that you are happy forever.